ワンダープロジェクトJ3

〜第十三章〜


ビュウゥゥゥゥゥ・・・・・
ザバーン、ザバーン、ザバーン・・・
ザアァァァァァァァ・・・・・
突風が吹き、海は荒れ、雨は激しく降り注いでいる。時刻は夜の11時、アッシュはアリシアとの待ち合わせの場所・・・カメイワの前にいた。
「・・・アリシア遅いな、まだ起きてないのか?」
アッシュは片手に荷物、もう片手に傘を持っている。このままアリシアと共に港にある船を使って別の島に向かい、そこで新たな生活をスタートさせる。それがアッシュの考えた計画だ。だが、当のアリシアはまだ来ない。アッシュは辛抱強く待ち続けた。その時・・・
ズバーン!!
「うわっ!」
森の奥から一発の銃弾がアッシュに向かって撃ち込まれた。アッシュは寸前のところで弾丸をかわした。だがそれで終わったわけではなかった。
ズバーン!ズバーン!ズバーン!
続いて三発の銃弾が飛んできた。アッシュはそれらも紙一重でよけると逃げ出した。殺されるかも知れないという恐怖心が彼の足を動かしていた。走り去るアッシュに続いて黒い影がその後を追いかけた。その手にはライフルが握られていた。

ズバーン!ズバーン!ズバーン!
「うわぁ!!」
逃げるアッシュに向かって執拗に銃弾が撃ち込まれる。だが狙いはそれて地面や木々に命中した。森の中で走り回る相手を狙い撃ちするのはかなり困難だということをアッシュは知っている。だが今はそんなことを考えている暇すらない。
「は・・・!」
アッシュは逃げ続けてとうとう夕方訪れた崖へと追い込まれてしまった。もう逃げ場はない。影の下ではまるで悪魔の鞭のように波が激しく崖を打ち付けている。
「もう逃げられんぞこの機械め!」
後ろから聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。アッシュは振り向くと声の主を見て唖然とした。
「バーロウ・・・さん」
そう、アッシュを撃とうとしていたのはアリシアの父バーロウだったのだ。その目は赤く血走り、顔には憎しみの念が浮かんでいた。
「バーロウさん、どうしてこんな事を・・・」
「黙れ!貴様のおかげで娘は堕落してしまったのだ!全て貴様の所為だ!何もかもな!」
「そんな、どうして・・・」
「お前達がこの崖で話し合っているのを俺は聞いた!アリシアは事もあろうに貴様を愛してしまった!その為にこの重要な婚約をドブに捨てるだと!?ふざけるな!たかが機械でしかない貴様に娘を奪われてたまるか!貴様さえいなければ・・・貴様さえいなければなあ!!」
バーロウはライフルをアッシュに向け、引き金に指をかけた。アッシュの足はガクガクと震え、彼は生まれて初めて死の恐怖を味わっていた。
ズバーン!・・・・
一発の銃声が森に響いた。アッシュはおそるおそる恐怖で瞑った目を開いた。ところが自分の身体のどこにも傷一つ無かった。アッシュは顔を上げた。そこには・・・アリシアが立っていた。わき腹から大量の血を流しながら。
「アリシア・・・お前・・・」
「アッシュ・・・良かった。無事な・・の・・ね・・・」
そのままアリシアは地面へと倒れた。その先にはバーロウが震える手でライフルを持ちながら立ち尽くしていた。
「アリシア!しっかりしろ!」
アッシュはアリシアを抱きかかえると必死に声をかけた。アリシアは息も絶え絶えにに言った。
「ごめんね・・・一緒に・・・暮らせなくて・・・」
「もういい、喋るな・・・すぐ病院に運ぶから」
「アッシュ・・・あなたが・・・・怪我しなくて・・・良か・・・った・・・」
アッシュの握っていたアリシアの手が、力なく地面にパタリと落ちた。そしてアリシアはゆっくりと目を閉じた。まるで眠るかのように・・・
ズバーン!
銃声が響いた。銃声のした方を向くと、バーロウが額から血を流して絶命していた。娘を撃ってしまった罪悪感から自分の命を絶ったのだ。その場にはアッシュだけが残された。
「アリシア・・・俺はお前に会えて幸せだったよ・・・本当に・・・」
アッシュはアリシアを地面に横たえると、後ろに向き帰って歩き出した。その先は崖だ。あと8メートル・・・7メートル・・・
「神様・・・もし俺に・・・」
6メートル・・・5メートル・・・
「この俺に・・・"心"という物があるのなら・・・・」
4メートル・・・3メートル・・・
「アリシアの元に・・・・」
2メートル・・・1メートル・・・
「いざなってくれ・・・」
・・・・そしてアッシュは崖下へと身を投げた。まだアリシアに脈があるとも知らないまま・・・。

第十四章に続く・・・


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