「あったぞ、カメイワが・・・」
アッシュはコルロの森にいた。夢に出てきた亀のような岩を探しに来たのだ。そして見つけた。亀の岩、イーダ神の象を。
「確かにこれが夢に出てきた。ここで俺は何をしていたんだ?」
アッシュはカメイワに腰掛けると空を見上げた。空は澄み渡っている。
「・・・・ララ〜、ラララ〜」
「何だ?」
突然アッシュの耳に聞こえてきたのは歌だった。誰かが歌を歌っているらしい。その声はこちらに近づいてきた。
「ラララ〜ララ〜ララ、あ、こんにちは」
歌声の主は小さな少女・・・クララだった。
「何だ・・・子供か・・・」
「お兄ちゃん、確か新しくこの島に来た人だよネ?」
「ああ、そうだが」
「名前はえ〜とえ〜と・・・」
クララはなかなか思い出せずに頭をひねっている。
「アッシュだよ」
「そうだった、アッシュお兄ちゃんだったよネ」
「お前は何て名前なんだ?」
「私はクララっていうの、よろしくネお兄ちゃん」
「どーも・・・」
アッシュは退屈そうに答えた。
「あ〜も〜、一体何処なのよ〜」
ミントは起きてからアッシュがいないことに気付き、アッシュを探して町中を走り回っていた。しかし、アッシュはいくら探しても見つからなかった。
「あら?いかがなさったのミント」
「あ、パールさん」
困っているミントに声をかけたのはパールだった。ミントはワラをも掴む勢いでパールに聞いた。
「ねえパールさん。アッシュ見なかった?」
「アッシュ?さっき確か森に行くところを見ましたわ」
「森ね、ありがと〜」
ミントは急いで森へと向かった。
「ラララ〜ララ〜・・・」
クララは優しい声で歌っている。その前でアッシュがカメイワに腰掛けて草笛を吹いていた。
「お兄ちゃん草笛上手だね。誰から教わったの?」
「さあな、忘れちまった」
「覚えてないなんて、変なの」
「はは、確かにそうかもな・・・忘れるなんて・・・」
ヒュウゥゥゥ・・・・
「あ、帽子!」
突然風が吹き、クララの帽子を吹き飛ばしてしまった。帽子は風に吹かれて遠くへと飛んで行った。
「大変、見つけなくっちゃ」
クララは急いで帽子の後を追いかけた。アッシュもそれに続いた。
「あ、あんなとこにある」
クララの帽子は海につき出た崖の端っこに引っ掛かっていた。クララは崖の上から手を伸ばして帽子を取ろうとした。
「う〜ん、う〜ん、とれない・・・」
ズルッ
「わぁ!」
「どうした!?」
クララはバランスを崩して崖から落ちた。しかし間一髪のところで引っ掛かっている帽子を掴んだ。
「た、助けてー!」
「待ってろ、手を放すなよ!」
アッシュは急いでクララの手を掴んで引き上げようとした。その刹那・・・
「なっ・・・」
彼は何かを思い出したような感覚にとらわれて手の力を緩めかけてしまう。
「お兄ちゃん!」
「・・・は!」
慌てて手に力を込め直すと、一気にクララを引き上げた。
「あ〜、恐かったよぅ、ありがとうお兄ちゃ・・・ん?」
「・・・・・・・・・・」
アッシュは無言で立ち尽くしていた。その目は虚ろだった。まるで何かに取り憑かれたように・・・。
「ど、どうしたの?お兄ちゃん」
「・・・アリ・・・シ・・・・ア・・・」
ドサッ!
「う、うわあぁぁぁぁぁ〜ん!」
アッシュは誰かの名前を呟くとその場に倒れ込んだ。クララは驚いて泣き出してしまった。
「あれ、確かにここだと思ったんだけどなぁ」
一足遅れてミントがコルロの森に来た。しかしそこには誰もいなかった。
「やっぱり別の場所なのかな・・・」
ミントがその場から立ち去ろうとしたときだった。
「あ、ミントさん」
「あ、ジョゼットさん」
ジョゼットが現れた。どうやら散歩をしていたらしい。
「ちょうど良かったジョゼットさん、アッシュを見なかった?」
「ううん、見てませんよ」
「う〜ん、何処いっちゃつたんだろう・・・あれ!?」
ミントは向こうからやってくるクララを見つけた。クララの背中にはアッシュがおぶさっていた。倒れてしまったアッシュをおぶってここまで来たのだろう。
「ク、クララちゃん!?アッシュさんどうかしたの?」
「あ、ジョゼットお姉ちゃん。大変なの!アッシュお兄ちゃんが倒れちゃったの!」
「そんな、アッシュがどうして?」
ミントは訳が分からなかった。だが次にジョゼットの放った言葉にミントは驚いた。
「早くガンテさんのところに運ばなきゃ」
「ガンテさんのところ?」
ミントはさっきよりも驚いた。何故ガンテの修理工場に運ぶのだろう、普通の人ならば病院に運ぼうと言うはずだ。なのに修理工場に運ぶという事は結論は一つしかない。
「ジョゼットさん・・・アッシュがギジンだって知ってたの?・・・」
「ミントさん、早く手伝って!」
「う、うん」
三人はガンテの修理工場へと向かった。
「う・・・ん」
アッシュは目を覚ました。
「ここは・・・?」
「あら、起きたの?」
目の前の扉の向こうから一人の少女が現れた。年齢は18歳ぐらいだろうか。アッシュはこの少女を見て言った。
「何だ・・・アリシアか」
「早く着替えてよ、今日は"ジェペット博士"が来るってセス博士から聞いてるでしょ?」
「ああ、そうだったな」
ここは過去の世界・・・アッシュの閉ざされた記憶の世界。