ワンダープロジェクトJ3

〜第九章〜


ザアァァァァァァ・・・・・・
雨が勢い良く降り注いでいる。アッシュはそこにいた。雨粒が頬を伝ってまるで涙のように地面に落ちた。いや、もしかしたら本当に泣いているのかも知れない。
アッシュは泣いていた。涙を流さず泣いていた。
どうして・・・・どうして自分は泣いているのだろう・・・何が悲しいのだろう。
するとアッシュは後ろを向くと、そのまま歩き出した。そして・・・
深い奈落の底へと落ちて行った・・・

「うわあぁぁぁぁぁ!!」
「うわっ!な、何なの!?」
アッシュは絶叫した。それに驚いて寝ていたミントは飛び起きた。
「・・・・何なんだ一体・・・今までと違う」
「どうかしたの?」
「いや、悪い夢を見たんだ・・・暗闇に落っこちる夢を」
「落ちる夢、それも過去の記憶なのかなぁ」
「さあな、俺には見当もつかない」
「あ、もうこんな時間だ。それじゃ今日から仕事だし頑張ろうね」
「言われるまでも・・・」
アッシュ達は仕事に行くことにした。行き先はカレンの居酒屋だ。

カレンの居酒屋
「ジョゼット、これをフレッドさんのところに運んでくれ」
「はーい」
・・・・・・・
「今度はこれをジェイソンさんのところに頼む」
「はーい」
・・・・・・・
「ジョゼット」
「はーい、何ですか?カレンさん」
「もうすぐ新入りが来るらしい、そいつらに仕事を教えてやってくれ」
「はーい、分かりました」
ジョゼットが返事をした途端、店の戸が開いてアッシュ達が現れた。
「お、噂をすれば・・・だね」
「あ、アッシュさんとミントさん」
「ジョゼットさん、ここで働いてたんですか?」
「うん、ミントさん達もここで働くの?」
「はい、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「はい、それじゃ自己紹介しとくよ。私がここの店主のカレンさ、よろしくな」
「どうもよろしく」
「よろしく、それじゃ仕事を教えて下さい」
アッシュは無愛想に挨拶をすると、仕事に取りかかった。

「ミント、これはウォレスさんのとこだよ」
「はい、カレンさん」
「アッシュ、これをルーミスさんのとこに」
「はい」
「ジョゼット、テーブルを拭いておくれ」
「はーい」
そして一日が過ぎて行った・・・。

「ふいー、疲れたー」
「このくらいで疲れるのか?もう少し体力をつけたほうがいいぞミント」
「ふーんだ、余計なお世話よ」
「お二人ともご苦労さん、今日のバイト代だよ」
「あ、ありがとうございます」
「よく頑張るね、ジョゼットに引けを取らなかったじゃないか」
「いえ、それほどでも」
ミントは照れ臭そうに答えた。
「ん?どうしたいアッシュ、元気なさそうじゃないか」
「いや・・・何でも・・・カレンさん、質問があるんですが・・・」
「何だい?」
「もし・・・今までの記憶が無くなってしまったら・・・取り戻したいですか?」
「そりゃもちろんさ、記憶がないなんてたまったもんじゃないよ」
「それが・・・どんなに辛く、苦しい過去でも?」
「当たり前だろ、どんなに辛かろうと苦しかろうと思い出なんだ。どんな思い出でも大切な物なんだよ。そんな大事な物を無くしたら誰だって嫌さ」
「そうですか・・・」
「どうしてそんな事を聞くんだい?」
「いえ、ちょっとした質問です。気にしないで下さい」
アッシュはそのまま店を出て行った。
「あ、ちょっと待ってアッシュ」
ミントもアッシュを追って店を出て行った。店の中にはカレンとジョゼットが残された。
「アッシュさん、どうかしたのかな・・・」
「さあね、アイツは何か辛い事でもあったんじゃないのかな」
「でも・・・いつもより悲しそうだった」
ジョゼットは心配そうな顔で言った・・・・。

「何か思い出せそうなんだ・・・あの夢が鍵を握ってるような気がする」
「あの夢って、落っこちる夢の事?」
「ああ、俺がどうして記憶を無くしたのか・・・俺が何者なのか分かるかも知れない・・・」
「アッシュ・・・・」

空で夕焼けが輝いている。辺りは一面茜色に染まっていた。
「ここは・・・コルロ島?」
アッシュは辺りを見渡した。すると、後ろに小さな家が建っていた。その家の中から一人の男が姿を見せた。
「やあ、アッシュ」
「セス・・・ブランドル博士・・・・」
アッシュは無意識のうちにそう呟いた・・・。

「そうか・・・"セス・ブランドル"彼は俺の・・・・」
目覚めたアッシュは言った。その横のソファーでミントが寝息を立てていた。

第十章に続く・・・


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